【雑記】IoTコンセントにて、前兆の有る火災を防げなかった場合の責任を問い合わせてみた。

例えば炊飯ジャーやエアコンが異常に発熱し、放っておくと火災になる状況。
この場合、IoT抜きに考えれば、大抵は大惨事になる前に利用者が気付く前提でいいだろう。
大抵は利用者が同じ建屋に居るため、ちょっと離れていても、音や熱や臭いの異常で気付く。
特に、初動時の異常は、利用者は見ているので尚更である。

しかしながら、IoTで操作する場合、人は離れた場所にいて気付かない。
そのため、本来なら大惨事になる前に気づいて防げるはずのものが防げない。

こういうケースは、世の中の殆どの家電製品には加味されていなくて当然というか、
殆どの家電製品はIoT家電の普及が実際に進んだ時期より前であるし(詳細下記)、
それ以降の家電製品全般においても、IoT利用に言及されていない。

この状況において、上記のような大惨事が発生した場合、誰の責任になるのだろうか?
まさかと思うが、そのケースにて家が全焼した場合、全焼分なりに製造者に責任が擦り付けられやしないか?
気になったので、まずは消費者庁に問い合わせてみた。


■先に結論をば

表題の状況の場合の責任は利用者が負うことになりそう。

まず、接続して悪い・良いものの定義を書く。(文献は、後述の経緯にて)
悪いものは『電気ストーブ・電熱器など、火災・感電・傷害などの危険を生ずるおそれのある電気器具・機器類』や『連続運転不可能な負荷機器』。
良いものは『AV 機器、業務用サーバー、換気扇、貯湯式温水器、冷蔵庫、又は固定された照明器具は連続運転可能な機器』。

で、 公的機関の対策方針は、規定外の製品との接続を禁止する旨の表示や確認機能の充実により、そういう利用をさせないこと。
そのための具体的な基準やレイアウト例まで定められている。
そのため、きちんとその方針に応じている製品の場合、守らなかった利用者の責任になると思われる。

で、こういう規定を守らせる前提で定められ、守らない企業・製品に対する言及は無い。


上記に挙げた悪い・良い例からして、守らない企業・製品は発生しやすいだろう、
何せ、IoTコンセントで便利になりそうな接続対象は殆ど悪いもので、良いもので便利そうなものは(どのみち連続運転可能なもののため)殆ど無く、
そうなると、公的機関の指針をきちんと守っていたら、IoTコンセントの需要は殆ど無いことになる。

そして、全然応じない企業や、『都合の悪い表示・確認に対して利用者に意識させない戦法』を行う企業
(細かすぎる表示・面倒な操作の途中にさりげなく確認画面を入れる)をする企業が出やすいだろう。

で、そういう企業のIoTコンセントを利用た結果、表題のケースで大損害になった場合、裁判により賠償や刑罰を課せられるだろうか?
全然応じない企業、例えば怪しい中国企業に裁判したって、会社ごと夜逃げ等でやり過ごされる確率が高いだろう。
また、『都合の悪い表示・確認に対して利用者に意識させない戦法』を行う企業に関しては、前例からして悲観的というか、
その典型例はソフトバンクだが、あの企業が契約期間縛り等の重要な事を極細かい表示にして読ませないことによるトラブルは、
ソフトバンクへの賠償命令や刑罰になっているだろうか?
そういう前例からして、結局は利用者が責任を負うことになるだろう。

IoTコンセントの利用の是非においては、こういう現実を踏まえるべき。


以下、問い合わせた経緯。


■消費者庁の対応

要約:
管轄はうちではなく経済産業省だけど、答えられる限り答えるよ。
利用者がそばを離れていたことは、誤使用として当該家電製品の欠陥を否定する事情になり得るけど、
裁判所による個別事情を踏まえた判断次第だよ。


全文貼っておく。
7/21に問い合わせ、8/3に消費者安全課から回答された。

いただいております「IoTのコンセントを利用して熱を出すもの」及び「家電製品全般の安全性」に関する内容につきましては、経済産業省にお問合せいただけますと幸いです。
https://www.meti.go.jp/policy/economy/consumer/anzen/index.html

また、一般論として、製造物の欠陥により損害が生じた場合における製造物責任法上の責任について、以下のとおり回答いたします。
製造物責任法は、当該製造物の特性、その通常予見される使用形態等、当該製造物に係る事情を考慮して、当該製造物が通常有すべき安全性を欠いているといえる場合(製造物責任法2条2項)には、当該製造物には「欠陥」があるとして、当該製造物を引き渡した製造業者等の損害賠償責任を定めております(同法3条)。
そのため、仮に接続先の家電製品(ヒーターや炊飯ジャー等)が異常を起こし高く発熱して火災が発生したことが、当該家電製品の「欠陥」に該当し、かつ、その他の要件を満たす場合には、一般論として、製造業者等は製造物責任法上の責任を負うこととなります。もっとも、使用者が当該家電製品の利用時にそばを離れていたことが、当該家電製品の通常予見される使用方法から逸脱した誤使用に当たる場合には、当該家電製品の「欠陥」を否定する事情とはなり得ますが、個別事案についての判断は、当該事案における様々な事情を踏まえて司法(裁判所)が行うこととなります。


■経済産業省の対応

消費者庁の回答を得た日(8/3)に質問フォーマットにて問い合わせたら、数日後に電話がかかってきた。
平日の昼過ぎで、いきなり早口のため、聞きにくいし要点以外はメモする余裕も無かった。
それでも、肝心なキーワードだけは、まともに聞き取れる速さで言ってきた。(下記)
【電気用品調査委員会】【遠隔操作機構】【報告書】【第8】


他(早口でもメモできたもの)
安全性は、第8の技術基準(何か正式に定めたものらしい)に適合することで担保する、適合しない場合は製造業者の責任。
遠隔機器においては、炊飯ジャー自身は該当しない。


■電気調査委員会

『経済産業省の方の回答の中で当方で定めているといわれたものは
電気用品調査委員会で取りまとめた上記の報告書を指しているものと思われます。』と回答される。
http://www.eam-rc.jp/pdf/result/remote_control_BP4_report20191118.pdf
※以降に書く各頁番は、この文章の各頁下端の番号。

経済産業省の人が言っていた8章は試験方法に関するもので、技術基準の最終判断ではなく、何でこの章なんだろうと思いつつ見てみたら、
47頁の『(2) 接続器』のように『リスクが許容可能である機器に限定していることを使用者に確認してもらう仕組み』により、
そもそも利用者が危険なものを利用しない前提となっていた。
それより、仮に事故が起きても、責任の所在は『念入りに表示・確認しても守らない利用者』になる。

禁止例は各所に書いて有った、以下抜粋。
 ・その頁の半ばの『火災・感電・傷害などの危険となるおそれがある機器は、接続しない旨』。
 ・48頁前半の『連続運転不可能な負荷機器への接続を禁止する旨を表示』
 ・59頁からのレイアウト例の『電気ストーブ・電熱器など、火災・感電・傷害などの危険を生ずるおそれのある電気器具・機器類』
この禁止例からして、部屋の温度湿度の変更や、加熱調理するものは全面的に駄目となる。

接続しても良いものは48頁前半に書いてあった。

AV 機器、業務用サーバー、換気扇、貯湯式温水器、冷蔵庫、又は固定された照明器具は連続運転可能な機器の例である。

他の類似記述全般においても、連続運転可能なものが良い傾向。
・・・・・どのみち連続運転できるものをIoT化するだけということ。

つまり、IoTコンセント運用で便利になりそうな対象はほぼ殆ど禁止対象で、許可対象で便利になりそうなものは殆ど無いだろう。


この文章全般においては、それが守られる前提(=表示や警告が徹底される前提)で、守らない企業・製品に対する記述は無い。
※この文章の目次参照。
しかしながら、現実には、全然守らない企業や、『都合の悪い表示・確認には利用者に意識させない戦法』を行う企業は多いだろう。


他の懸念事項にも気づく。
要は、表示レウアウトの文字数が多いため、『字を細かくして読ませなくする戦法』の口実になりやしないかということ。

59頁のレイアウトより:



この文字数で、きちんと読める大きさにするには、コンセントの筐体も相応に拡大修正することになる。


こういう経緯により、この記事前半に書いた結論となる。


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