理文シフト理論と理文比率理論 ――― 具体例集1


理文シフトの例として、SNS


■前提条件を満たす前の状況

◇SNSにおいても、前提条件を満たす時期より前に市場化を試みても成功しないことは変わらない。
   MIXIやGREEより前にもSNS的なものは開始されているが(WikipediaのSNSの日本の歴史参照)失敗か低迷である。

◇この件は、【実行妥当性】だけ満たしても駄目という例でもある。※参照:全体論編の■【事情】
  【粗利妥当性】や【需要妥当性】も満たさなければ成功しない。
  ※扇動的な技術論全般においては、【実行妥当性】を満たすことだけを根拠に市場化成功すると見なしがちだが、誤りである。

◇【需要妥当性】に関しては、SNSにとって美味しい客である『コミュニケーション大量消費依存者』の需要が増えないことには、
  (よほど客単価を高く出来ない限りは)採算に合うだけの需要に至らない。
  で、大衆にネット回線が普及し、使い慣れた時期(2003年初頭)までは、ネット利用者の数が少ないだけでなく、
  美味しい客が少ない(←ネット草創期のユーザーは対人交流よりもネット界に入り浸る層)ため、需要的に無理。
   参考:【PC・ネット普及率の記事】

◇【粗利妥当性】も満たさなければなないわけだが、その手段はコスト効率向上だけでなく、広告技術もある。

  先に駄目だった例を挙げると、MIXI・GREEと同じころに開始したGocooという合コン向けSNSで、
  収益手段として『気に入った人とコミュニケーションを取るのに525円』を保持し続け、
   MIXIが十分に普及した2005年6月でも普及せずに(その頃でも上記課金維持)サービス終了した。

  SNSは、客がなかなか課金してくれないため(特に、初っ端から課金してくれない)、収益手段として広告に頼らざるを得ない。
  そのため、収益化できるような広告技術の早さも市場化成功の早さに関わり、早く実現したMIXI・GREEは早く市場化に至った。


■基幹技術の早さと高度さ、そのための理系能力

前提条件が満たされた後、しばらくの間は、基幹技術の影響力比が高く、十分な基幹技術を早く実現したもの勝ちの状況であった。

先行2社(MIXI、GREE)に数カ月遅れて他が追随したが、既に先行2社がユーザーを数十万稼いでいて、
それらのSNS上で人脈が出来上がっているため、大衆にとっては(よほど魅力の差が無い限りは)他を選ぶ利点は無い。
また、旧世代(SNS以前の、各自でブログ持つなどのサービス)のサービスと比べると、
気軽に交流網を築ける能力は格段に高かっため、旧世代から交流需要を奪うのも容易だった。
こういう事情から、他社より先に普及開始して人脈を築かせたSNSが強力な先行者優位を持つことになった。

それと、先行2社同士の優劣においては、初めから多くの基幹技術(日記やメール機能)を実装したミクシィの方が人気が高く、
(その頃に限っては)MIXIの方がユーザーを多く稼いだ。

この時点に重要な能力は何かに関してだが、要するに理系能力で、
市場化に必要な能力はソフトウェアの土台やサーバー構成のような基幹技術であり、
より多くの機能(日記やメール)を盛るための技術(=大量の処理や、大量人数大量アクセスに耐える技術)も基幹技術で、
それに必要な能力はほぼ理系能力のため、この時期においては理系能力が重要であった。

逆に、他の要因に関しては、この時期から酷く(Wikipediaに載る数だけでも問題の質や程度が酷い)、不評は多かったが、
この時期においては機能面で競り合うライバルに乏しいため、不評が多くても利用者に逃げられにくかった。


■段々と理系偏重で成功しなくなっていく。

時が経つにつれ、ライバルも同等の基幹技術を達成していくため、その基幹技術での差は小さくなっていき、
他の基幹技術で差を付けようににも、段々と競争力の低い手段しか残らなくなっていき、
その反面、利用者の操作感・社会・心理を捉えて機能に反映させるような社会科学的な対応の重要性が増し、
例えばLINEのような単純なものですら一気にシェアを奪うようになった。

それに必要な能力は、他人の社会・心理・操作の癖などを把握するための文系能力と、
その把握結果をソフトウェアに反映するための理系能力の双方が必要、つまり理文中間となる。

さらに時が経つと、ライバルも社会科学的な改良を追随し、他の社会科学的改良で差を付けようにも
段々と競争力の低い手段のみになるため、消去法的に対外業務力の影響比率がやや高めになる。
何せ、利用者的には機能の大差が無いため、特定のSNSでなければ凄く不便というわけでもなく、
イメージが悪かったりトラブル対応が悪かったりすれば他SNSに移られやすくなる。
で、 それらに必要な能力は、利用者の心情を察する能力、適切な対応の判断能力、言い回し等の文系能力に偏る。

実際、ミクシィは、2008年度以降に起こした多数の問題(投稿物をミクシィが自由に使う権利の主張等)によって、
利用者離れや株価の暴落などに至ったわけだが、その背景には、 2008年頃からは他のSNSが十分代わりになる状況のため、
問題を起こせば移住されやすくなったことが有る。


前提条件の例として、デジカメ

【この推移図有る記事を参照】

図の1995年にてカシオが市場化している、つまり【実行妥当性】は満たしている。
しかしながら、その時点では市場規模が無い同然のため、採算は悲観的。
仮に採算が合っても【優先妥当性】に反する。 (効率の悪い投資先に投資する分、より効率の良い投資先への投資が減る)

その事情を詳しく言うと:
 @この時点では、デジタルならではの需要(PC保存・転送・デジタル編集等)が少な過ぎる(windowsXPやネット回線急増は2001年)。
  つまり、『デジタルカメラのみの市場』(アナログカメラを含まず)は【需要妥当性】を満たしていない。

 A『持ち運びカメラ市場全体』(アナログカメラも含む)での競争において、従来カメラに勝てていない。
   事情は、基幹技術(精度)がアナログに及ばず、さらに、アナログカメラには長年培った社会科学力があること。
   ※精度面でアナログに勝てるようになったのは、【2004年頃の比較記事】等からして、2004年より先。

 こういう事情の解決は自社だけでは不可、@は完全に外部依存で、Aも(自社だけでなく)電子業界全般の技術力に依存する。

◇1999年頃から事情は変わり始め、PCやネットの普及が進み【PC・ネット普及率の記事】、デジタルならではの需要が増え始めた。
そして、『その利点での差』によってアナログに勝ちやすくなると共に、デジタルカメラ独自の需要も増え始めた。


理文比率理論の利用例


COBOL(1959年に出たプログラム言語)が未だに一定のシェアを保ち続けている理由は、理文比率範囲により考えることが出来る。

要点:
 ・COBOL勢がシェアを維持しているのは主に企業別の業務システムの一部(主に、事務に特化したもの)。
 ・その市場においては、理文比率範囲の社会科学力のは底値でも50%有り、そのため、
   社会科学力での劣勢は他要因で挽回することが困難。
 ・COBOL勢の社会科学力が他者よりも高いまま。

そういう市場においては、顧客の事情を細かく・確実に正しく・ 機敏に察して実装したり、
顧客が概要さえ言えば細かい事まで察して適切に実装してくれるような社会科学力が圧倒的に大事。

その反面、基幹技術は一昔前のでも足りるため、基幹技術は競争力になりにくい。
また、対外業務力においても、この種の商品は稟議を通す都合上、営業や広報に釣られにくいため、競争力になりにくい。

そういう事情から、常に(=一次的に基幹技術の競争力比が高くなる時期においても)、
『基幹技術の影響比率比率 + 対外業務の影響比率』は社会科学のを上回らないまま。

そして、COBOLのオッサン達は総じて社会科学力が高いというか、COBOLは文系言語なだけに担い手も文系寄りが多く、
既に掴んでいる顧客に対しては、相手が概要を言えば詳細まで適切に察するとともに、手際よく実装する能力まで有る。


顧客別細分理文影響比率(顧客細分比率)の例として、女性向けアパレル市場を挙げる。

以下のような顧客層毎に顧客細分比率を考えることが出来る。
 1.ブランドイメージに釣られやすい層。
 2.ブランドイメージに釣られにくいがファッションの拘りが特に強く、.高めのものでも買う層。
 3.比較的拘りが低い層。

1.は、対外経営の比率が高いのは言うまでもない(そのため詳細省略)。

2.は、より自分の強い拘りに合うものを実際に買うため、それに対応するための社会科学の影響比率が高めになる。
  また、その拘りに対応するために素材の質も重要になるため、基幹技術の影響比率は少し高めになる。

3.においては、拘りが低い人達の都合上、、社会科学的対応においては2.の売れ筋の模倣で良いため影響比率は低くなり、
  それよりも安価に大量に製造するための基幹技術が重要となる。


就職活動での、理文シフト絡みの失敗例

例えば、SNSやビッグデータやIoT等、近年発生した新市場においては、【創出】の時期においては理系偏重が活躍しやすいため、
理系偏重な人達が夢を抱くことも有るだろうが、彼らが実際に就職する時期でも同じ状況は限らない。

例えば、理系偏重でWeb系のキャリアが凄いわけでもない者が、SNS草創期の企業(GREEやMIXI)を見て、
いつかはその会社で活躍したいと思い、求職活動とともに自力学習も行うとする。
しかしながら、 【創出】の時期においては、市場規模が巨大でないために職の枠数は少ないとともに、
彼のキャリアではライバル求職者に劣るために、その時期では就職できない。
そして時が経ち、職の枠が増えていくと共に、彼のWeb能力も向上し、職に就けたとする。(具体的には2008年位とする)

しかし、その頃には【創出】の時期は終わっており、理系偏重型の需要は減っている。
そうなると理系偏重以外の仕事を任されることも多くなるだろう、例えば、トラブル対応・ユーザビリティの向上・規約改定等。
しかしながら、それらは理系偏重な彼が巧くやれる仕事ではない。


理文的に融通が利かない者の転職―――渡る者は輝かしく、残る者は冴えない

まずは理系偏重者の例。
輝かしいキャリアを維持しつづける方法の1つに、理系能力が重要な時期の市場のみを渡り続けることが有る。
そういう時期の市場に転職し、そういう時期でなくなる頃には他の『そういう時期の職場』に転職する。
そうすれば、常に自分の価値は高く、輝かしくあり続けられる。
逆に、そういう時期でなくなっても残り続けるのならば、自分の価値や成果は落ち、冴えなくなるだろう。

特に、IT関連の市場全般においては、基幹技術の影響力比が高い状態は長く続きにくい反面、
常に何かの市場において基幹技術の影響力比が高いため、そういう世渡りは行いやすい。

まぁ、理屈で言うのは簡単だが、実際に成功するためには時流の先読みや自力学習が必要であるし、
それ以上に、現在の就職先での成功状態を捨てる決断力も必要。
 


こういう状況は理系偏重以外でも同様。

例えば、マーケティング(=社会科学的)で活躍している人の場合、基幹技術の影響比率が高い市場においては、
いくら自分的な成果を上げたところで、その時期の基幹技術者達のの圧倒的成果に比べたら遥かに見劣りする。

それ以上に、自分の実力ではどうにもならないというか、いくら自分の調子が良くても、ライバルの基幹技術力が高い場合、
その圧倒的競争力差によってライバルに負け、自分の評価までも悪くなる。

詰まるところ、この時期は、マーケティングの人的には、良い目に遭いにくく悪い目に遭いやすい。
そのため、『売れにくいものを売れるようにする余地がある市場』を渡り歩いる者は輝かしく、残る者は冴えない。


基幹技術以外が駄目なまま企業の例、MIXIの基幹技術以外での失態例

理系偏重での成功にうつつを抜かしているとどうなるかという例。
MIXIのWikipediaの問題点の項より引用。 

問題例 要因 問題点
コミュニティ乗っ取り 社会科学力 管理人が居なくなったコミュの対処や、管理人に対する悪意的行為への対処がろくに行われていないせいで、悪意者がコミュの管理人になれるケースが多発した。
mixi疲れ 社会科学力 ツイッターの「いいね」のような、軽い負担で閲覧・同意等の意思表示をする手段に欠けていた。
mixi運営側の強引な手法 対外業務力 要するに、担当者の対人能力の欠如が酷く、さらに、非を認める人格すらな無く、根本的に、そういう人材しか充てれないような対外業務力が問題。
どのような個人情報掲載内容が悪いか判断する能力が欠けていただけでなく、異議申し立てに応じない位に人格が酷い。
しかも、当時のSNS業界の人気からして、仮にその気が有れば、十分な対外業務力の人材を雇うのは難しくないのに。
わいせつな投稿の削除 対外業務力 詳細基準を出すだけの対外業務力すら無い。
そのため、利用者的には何が削除されるか把握しにくく、過度な自粛や混乱となった。
コミュニティ大量削除 対外業務力 地域ローカル・同窓会・同人系かの区別すらできない対外業務力。
また、その程度のくせして実行に移す独善さと、根本的に、そういう人材しか充てれない人材戦略が問題。
2008年4月1日施行予定の利用規約改定を巡る問題 対外業務力 ユーザーの投稿物を勝手に利用する権利を主張したり、ユーザが著作人格権を行使するのを禁止したりすれば、凄く反発されることくらい、人並の対人能力が有れば察すれるはずの事なのに、それが分からない。
新機能の相次ぐ休止 社会科学力 「メールアドレスはmixiに登録しているが、他のユーザーには知られたくない」というケースを想定するだけの社会科学力が無い。
アカウント大量乗っ取り 対外業務力 早々に登録ユーザー全員にパスワード変更させたり、パスワード変更強制(および単純なパスワード禁止)等すればかなり軽減できるはずだが、行っていない。


【書庫】 【TOP】